今、若者たちへ-君に伝えたい私の経験-
今、若者たちへ−君に伝えたい私の経験−<広告企画>

君に伝えたい私の経験 

第49回 長谷川閑史・武田薬品工業社長

  • 更新日:2008-03-28

「公正、正直、不屈」の精神で
与えられたチカラを存分に発揮しよう


 長谷川閑史氏
はせがわ・やすちか 1970年早稲田大学政治経済学部卒、武田薬品工業入社。99年取締役 医薬国際本部長、事業戦略部長を経て、2003年から現職

 “Life is unfair”。人生は不平等、公平にはできていない。しかしチャンスは誰にも必ず訪れる。「そのチャンスをつかむ準備が大切だ」と語る武田薬品工業の長谷川閑史社長。与 えられた場所で最大限の努力をしてきた長谷川社長が、自身の経験に基づいたメッセージを若者に送る。

■失敗は次への糧に 嘘やごまかしはだめ
 大学に入った時、学校は学園紛争の真っただ中。さっぱり授業は行われず、アルバイトに精を出していました。アルバイトしてお金をためては山登りに行く生活。本も随分と読みました。今思えば、学 生時代は社会人になるための蓄積の時間だった気がします。いろいろな人にも出会って話をした。人生とは出会った人と読んだ本から多くのことが学べると思います。

 入社して最初の配属は、工場の勤労課。めったに新入社員が配属される場所ではありませんでした。仕事は慣れないことばかり。失敗の連続でした。例えば、工 場報に載せる写真の撮影でフィルムを入れ忘れたことがあります。元来のそそっかしい性格もあり、失敗は数知れず。一度社内報に書きましたが、私は最も多くの失敗をした人間ではないかと思っています。し かしそれを隠したり、嘘(うそ)をついたり、ごまかすことだけはしませんでした。失敗はできる限り最小限にとどめ、二度と同じ間違いを繰り返さないように努めました。
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昨年開講したグローバルリーダー育成プログラムで講義する長谷川社長(左端)


 工場の勤労課で3年、本社人事部で3年勤めた後、労働組合で仕事をしました。当時、そろそろ営業に出たいと考えていたのですが、組合の仕事も面白そうだと思い、引き受けました。結 局8年間勤めたのですが、組合の仕事に一生懸命取り組む一方で、営業に出て会社に貢献したいという気持ちは一段と強まりました。当時の武田薬品は国内市場では強かったのですが、海外展開は遅れていた。直 感的にこれからは海外だろうなと思い、英語の勉強を始めました。同期入社の仲間と週末に会社の研修所に泊り込んで、英会話の練習を徹底的にやりました。

 英語に少し自信が付いたころ、国際事業部に異動になりました。いざ仕事を始めてみると、自分自身に足りない部分が多いことを思い知らされました。例えば、経理知識。損 益計算書や貸借対照表になじみもなかった。そこで仕事を終えてから専門学校に通い、簿記二級を取得しました。その後、ドイツに赴任して新薬の開発センターの立ち上げにかかわったのですが、そ の時勉強した知識が本当に役立ちました。

■現状に満足せず人真似はしない
 人生は誰にも平等、公平とはなっていません。しかし、チャンスはある程度平等に、それぞれにいろいろな形で訪れると思います。そのチャンスをつかむ準備ができているかどうかが重要です。では、ど うやって準備すればいいのか。残念ながら妙手や近道はありません。普段からまじめにひたすら努力するしかない。よく自分が成功しない理由を才能がないからと言う人がいますが、私のイメージとして、成功は努力7割、 運2割、才能1割だと思います。

 私は29歳で結婚したのですが、その時、妻に「課長にはなるだろう」「海外勤務はないと思う」という2つを話したそうです。社長になった上、15年間もの海外勤務。妻から「嘘だったわね」と、い まだに言われています。私自身、社長になるなんて考えもしていませんでした。自分で勝手に思っているだけですが、与えられた場所で常にベストを尽くしてきた。自分を追い込んで必死に努力を重ねてきた。そ れだけです。

 人間には「過去の経験から未来を予測する」とか、「目標を決めてそれに向かって努力する」といった人間しか持たない特殊な能力があります。人間がいま進化の頂点にあるのは、そ うした特殊な能力があるからこそ。ならば、与えられた力を最大限発揮していくべきではないでしょうか。

 若い人たちに、ぜひお願いしたいのは、できたら自分を追い込んで、嫌なこと、やりたくないこと、避けていることを、毎日少しずつでいいから取り組んで改善する努力をしてほしい。そ ういった意識を持つ、つまり現状に満足しないことが大切です。もう1つ、人の真似(まね)はしないこと。会社も社会も多様な人がいるから成り立っています。よく新入社員に「チャレンジングであって欲しい」と 指導すると聞きますが、会社がそんな人ばかりになったら、それはそれで困るでしょう。周囲を気にせず、個性を大事にしてください。

 私は日ごろから社員に、誠実つまり「公正、正直、不屈」の精神で仕事に取り組んでほしい。そして与えられた場所でベストを尽くしてほしいと話しています。皆 さんも与えられた能力を無駄にしないように努力してください。訪れたチャンスを逃さないために。