今、若者たちへ-君に伝えたい私の経験-
今、若者たちへ−君に伝えたい私の経験−<広告企画>

君に伝えたい私の経験 

第48回 小林栄三・伊藤忠商事社長

  • 更新日:2008-03-24

人の長所に着目 信頼は組織のきずな
自分の持ち味自覚し 良き社会人たれ


 小林栄三氏
こばやし・えいぞう 1972年大阪大学基礎工学部卒、伊藤忠商事入社。 96年情報産業 ・メカトロシステム部長、99年情報産業部門長、2000年執行役員 、0 2年常務執行役員経営企画担当、03年常務取締役、04年4月専務取締役、同6月から現職

 伊藤忠商事の小林栄三社長は理系の出身ながら「モノより人に興味がある」と商社を就職先に選んだ。今も「人と会って話すのが趣味」。その素養は40年以上も前の高校時代に培われた。人 をポジティブにとらえる人間観や、多様な個性を束ねて目標に突き進むリーダーシップの原点もそこにある。そんな小林社長が若い人に伝えたいことは何か、求めるものとは何だろうか。

■高校時代に人間観培う
 私の生まれは福井県西部の上中町。NHKの朝ドラ「ちりとてちん」の舞台のすぐ近くです。高校は地元の県立若狭高校で、この学校には「ホーム制」というユニークなクラス編成がありました。普通科、商 業科などの通常のクラスとは別に、科や学年を超えた40のホームがあり、文化祭などはホーム単位で参加しました。科が違えば人生の方向も違います。多様な価値観に常に直接触れたことで、人 を見る目や見方を養えたと思います。

 ある時、紛失事件が起き、商業科の友だちが犯人扱いされました。私のいる普通科は進学組で、教師は日ごろから普通科に甘く商業科に厳しかった。この一件もそんな見方が背景にあり、そ の生徒自身をきちんと見たものとはいえなかった。私はこの点を全校集会で猛烈に抗議しました。多くのことを教えてくれたホーム制でしたが、10年ほど前に廃止され、誠に残念でなりません。

 人には必ず秀でたところがあります。私はそれを見つけるのが好きで、自分にも吸収しようとしてきました。会社に入ってからは、会社生活で出会える人の数はせいぜい4,5万と計算し、一 つひとつの出会いを大切にし、可能な限り多くの人と会うようにしてきました。

 人を好きになるか、嫌いになるか、人生にとって大きな問題です。しかし、それはしょせん、人のいいところを見て惚(ほ)れるか、悪いところを見て非難するかの違いです。会 社の文化としては前者を根付かせたいと強く思います。嫌いと思ったら、関係は絶対に良くなりません。
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1976年、自 ら志願した初の海外駐在地、香港にて。自分で仕事を取り仕切り、責任の重さとやりがいを感じる毎日を過ごした(本人、3列目一番左)


 事実、若いころ、ある組織が部員間の不仲が原因でうまくいかなくなったのを見ています。人が人を信頼しないことによる弱さと、人が人を信頼することで生まれる強さ――会 社組織ではこれらが如実に表れるのを見てきました。人に関心を持つことで会社はものすごく良くなります。反対に無関心であることから、いろいろな問題が起こるのです。

 よく、人は4つのカテゴリーに分けられるといいます。チャレンジして成功する人、何もしないで実績もない人。議論が分かれるのはチャレンジして負けた人とチャレンジせず勝った人の評価です。人 事の永遠の課題かもしれませんが、私はチャレンジして負けた人を評価します。負けた経験も次に必ず生きるからです。

 メーカーは失敗しても技術が会社に蓄積され、次はそこがスタートラインになりますが、商社は振り出しに戻るだけです。でも、社員には失敗の経験が蓄積されます。こ うした個々の資産を開放し共有することが商社にとっては重要です。そのためにも互いに関心を持ち、人に学ぶ姿勢が大切です。

■入社4年以内 全員を海外へ
 今後、日本の人口が減り、世界の人口が増え続ける中で、ビジネスの主戦場は世界に移ります。日本が生き残るためには、アジアを中心とした世界との連携がカギを握ります。そのために性別、国籍、年 齢にかかわらず、世界視点を持った「世界人材」を育てていくことが必要で、まずは入社4年以内に若手全員を一定期間海外に派遣しています。また、多 様な人材が活躍できるようにワークライフバランスの取り組みに注力しています。

 最近の若い人たちは確かに優秀です。しかし勉強や語学以前に、まずは人生を生きるための基本と強みを身に付けておいてほしい。基本とは良き社会人であることです。嘘をつかない、悪いことをしない、人 を敬うといった当たり前のことですが、だからこそ一番大事なことです。強みとは、いわば各人のアイデンティティーです。1億2000万人いれば1億2000万通りあるんです。それを見失ってしまう人もいるので、自 分の軸足をはっきりと自覚しておき、困った時はそこに帰ればいい。

 当社は総合商社であって集合商社ではありません。4000人の社員が互いにシナジーを発揮して団体戦に強くなることが大切です。一人ひとりの個性と互いの連携を生かし、個 人戦でも団体戦でも強い会社でありたいと考えています。