今、若者たちへ-君に伝えたい私の経験-
今、若者たちへ−君に伝えたい私の経験−<広告企画>

君に伝えたい私の経験 

第36回 苅谷道郎・ニコン社長

  • 更新日:2008-02-05

原理原則に則して徹底して考え抜き
自分の意見をきちんと主張する


 苅谷道郎氏
かりや・みちお 1967年横浜国立大学大学院工学研究科修士課程修了、日本光学工業(現ニコン)入社。95年取締役相模原製作所長、99年映像カンパニープレジデント、2 001年常務、02年精機カンパニープレジデント、03年専務、04年副社長を経て、05年から現職

 2007年度、四期連続で過去最高益の更新がほぼ確実となったニコン。05年に現職に就任し見事V字回復を果たした苅谷道郎社長は、不振事業を幾度となく立て直してきた“改革の人”だ。「 物事に行き詰まったときは、原理原則に則して徹底的に考え抜く。この繰り返しで確実に力がついていく」と説く苅谷社長に、自身の就職、若手社員時代の経験、若者への期待などを語ってもらった。

■オン・オフの切り替え、チームプレーが大事
 大学院の修士課程を修了し、就職先に選んだのは日本光学工業(当時)でした。大学では非酸化物ガラスの構造を研究し、その成果が認められて大学の先輩から誘われたのが直接の動機です。加えて、も ともと私は小学生のころからカメラ少年。一時は本気で写真家になろうと考えたほどでしたから、自分でカメラのレンズを作りたいという思いで入社を決めました。

 そのころちょうど当社は国からあるプロジェクトを受けていて、学生時代から研究していた、空気に触れずにガラスを溶かす技術を駆使して、赤外材料を作りました。以来、そ の延長として16年間ずっと光学レンズの研究一筋の生活でした。忘れもしないのは、入社2年目に色のにじみを補正する「EDレンズ」の開発に成功したこと。こ のEDレンズは今もなお当社でカメラや半導体露光装置などの中核技術として利用されています。

 当時のガラス工場はまさに経験主義者の固まりで、なかなか新しいことに耳を傾けないのが実情でした。実際、私がガラス溶解の手法を変えようものなら猛反発が起きるわけです。そ んなとき心掛けていたのは、常に自分で仮説を立てて、仮説検証型の実験を繰り返しながら、周囲を説得していくこと。事あるごとに相手の発言を理詰めで論破するので憎まれましたが、やがて製造現場の職長なども「 あいつの言うことなら正しいだろうから、やってやろう」と言ってくれるようになりました。

 一方で、この成功をフイにするような大失敗もやりました。自ら光学ガラスで人工歯根を作るプロジェクトに携わったものの、頓挫してしまったのです。何件か治験も終え間もなく事業化という寸前で、体 内の状態次第で歯根が壊れる危険性が高まるということが構造解析の結果分かりました。それで撤退を訴えたら周りから総スカンです。結局、プロジェクトを外され、全 く異なる分野の仕事だったカメラの品質管理部門に異動させられました。
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暇を見つけてはヨットづくりに精を出し、自作のヨットで試合にも出場した


 そんな経験もあって、私は徹底して考えることを重視しています。世の中、原理原則に当てはまらないことが起きるのは確か。しかし原理原則をきっちり押さえることが大事で、そ れに則して徹底して考え抜く。良くしたもので原理原則に反したものは長続きしませんよ。ただ、大事なのは、オン・オフでの頭の切り替え。1日、1週間、1カ月、1年単位でそれを実践する。私自身、閑 職にやられた一時期、海外から材料を取り寄せ、ヨットづくりに精を出しました。そのヨットで全国選手権に出て、2位に入ったこともあります。

 そして考え抜いたことを、皆を集めてきて一生懸命に説明してみてください。説明し、議論すると、思わぬアイデアが浮かんだり、皆から提案してもらえたりします。仕事は一人ではできませんから、や はりチームプレーも大切です。そのためには自分の考えを他人に納得してもらう努力が欠かせません。言いたいことはきちんと言い、言ったからにはやる。これが自分を成長させ、さ らには組織を活性化することにつながります。

 今、世の中はものすごいスピードで動いています。デジタルカメラの製品サイクルはコンパクトタイプで半年、一眼レフで2年ほどです。私は昨年の入社式で「 勝ち残って行くには変化に対応するだけでなく、むしろ変化を創(つく)り出せ。お客様の期待以上の成果を生み出してこそ変化だ。そのためには挑戦する気持ちが大切」と訴えました。「期待を超えて、期待に応える。」 が今のニコンのキャッチフレーズですが、そのためにもやはりお客さまは何を求めているか、それに対して会社、自分は何ができるかを徹底して考え、新しいことに挑戦し続けなければいけません。

■権威や惰性に流されず新しいことに挑戦を
 今の若者は非常に優秀ですが、組織適応型というか丸いというか、意識してサラリーマンになろうとしているきらいがあります。もっと個性を出してほしい。権威とか惰性とか、そ ういうものに流されないでぜひ自分の主張を繰り返して、あきらめずに新しいことに挑戦してほしい。私なんて直接的な物言いが上司の反感を買い、過去に3度もいわゆる窓際にやられたほどです(笑い)。それでも、誠 実に仕事に取り組み、着実に成果を出して行けば、必ず誰かがそれを見ていて引き上げてくれます。頑張ってください。