今、若者たちへ-君に伝えたい私の経験-
今、若者たちへ−君に伝えたい私の経験−<広告企画>

君に伝えたい私の経験 

第28回 山内康仁・アイシン精機社長

  • 更新日:2007-12-27

大切なのは、自分なりのテーマを見つけ
徹底して取り組むこと


 山内康仁氏
やまうち・やすひと 1968年東北大学大学院工学研究科修士課程修了、トヨタ自動車工業(現トヨタ自動車)入社。95年取締役、99年常務、2001年専務を経て、0 5年から現職

 連結売上高が2兆円を超える巨大自動車部品メーカー、アイシン精機。2005年にトヨタ自動車から現職に就任した山内康仁社長は、常にものづくりの最前線を歩いてきた。「技術であれ、仕事であれ、一 見単純に見えても、カイゼンの余地はいっぱいある。自分でテーマを見つけ、精力的に取り組むことで成長につながる」。山内社長に、若手社員時代の経験、仕事観、若者への期待などを語ってもらった。

■疑問を一つひとつ解き仕事の面白さに開眼
 大学院の修士課程を修了し、就職先に選んだのは実家に近いトヨタ自動車工業(当時)でした。就職先が決まったとき、仲間うちから「お前は鋳物をやらさせられるぞ。鋳物はきついぞ」と からかわれました。今も昔も鋳造担当は3K(きつい、汚い、危険)職場ですが、いざ配属先が決まると、まさにその鋳造担当でした(笑い)。約150人の中からわずか4人が配属されたわけですから、か なりの運の悪さです。正直、当初はがっかりしました。

 それがしばらくたつと、心境が変わってきました。楽しくなってきたのです。門外漢の私には鋳物の世界は分からないことばかりで、文 献に当たりながら疑問を一つひとつ解いていくことが面白くてしょうがなくなっていきました。

 転機になったのは、配属から2カ月が過ぎたころ。単独で取り組む仕事のテーマを与えてほしいと上司に直談判し、「シリンダーブロックの被削性の向上」というテーマをもらいました。今思えば、生 意気な社員でしたね。鋳物が削られるというのは、どういう現象だろうかと、原点に立ち返って必死で研究しました。しかし物事を突き詰めていくと、必ず壁にぶつかります。壁 を乗り越えようともがいている最中はものすごくつらいでしょうが、ここで更なる努力を惜しむようでは物事を成就できません。

 私の経験では、仕事を続けていくうえで最も大切なのは、興味を持てるテーマを見つけることです。世間ではライン業務はつまらないと思われているようですが、とんでもありません。ラ イン業務でも同じ仕事を従来の人員の半分でやりきるとか、リードタイム(生産にかかる時間)を2分の1に短縮するとか、いくらでも挑戦的な面白いテーマになります。自分なりのテーマを見つけ、精 力的に取り組むことで成長できるのです。自分で決めたテーマであれば、やる気も断然違ってくるはずです。
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30代後半、ス イスでの論文発表の場にて(右から2人目)


 サラリーマン人生で忘れられないのは、やはり成功と失敗の経験です。入社3年目からカムシャフトの製造プロセスの開発に取り組みました。暗くて砂埃(すなぼこり)の舞う、き つい作業現場を少しでも快適にしたいというのが出発点です。新ラインの完成までには5年ほど費やしましたが、幸い特許も取れ、社長賞までいただきました。このラインは今もなお現役で稼働しています。

 一方で、この成功を帳消しにするような失敗もやりました。鋳物の冷却ラインを従来の10分の1に短縮する技術を開発したものの、い ざラインを立ち上げてみると出来上がった製品が次々にパカッと割れるんです。これには心底焦りました。結局、数億円をかけてラインを大改装するという失態でした。「技術の世界ではあいまいさを残しては絶対にダメ」 という真理をこの時に体に染みこませ、大きな財産となりました。

■頑固さと協調性を併せ持ってほしい
 当社の社員を含め、今の若者を見ていて感心するのは、数カ国語を流暢(りゅうちょう)に話したり、コンピューターにものすごく詳しかったりと、“一芸”に秀でている人が多いことです。「指示待ち族」 などとやゆされますが、私はそうは思いません。勝海舟が『氷川清話』で「今時の若者は……」と嘆いているように、これはいつの時代も同じでしょう。

 今の若者にあえて私が望むとすれば、頑固さと協調性を併せ持つことです。頑固者はとかく煙たがられますが、時には上司を説得するくらいの覚悟で臨まないと、いい仕事はできません。また、一 芸に秀でているような人は得てしてチーム作業が苦手だったりするので、粘り強く取り組みながらも、他人の意見にも耳を貸す協調性があれば、複眼的な視点から物事に取り組めるようになるでしょう。

 最後に自戒を込めて言うことですが、会社にはどうしても目立つ人と目立たない人がいます。社員の90%は縁の下の力持ちで、目立たないところでも腐らずにこつこつと仕事に取り組んでいるものです。当 社はそうした社員もきちんと評価する会社でありたいと考えています。