NIKKEI BUSINESS INNOVATION FORUM 経営強化を狙うITの活用探る 次代を拓く企業経営 〜IT活用で高める地域力〜 NIKKEI BUSINESS INNOVATION FORUM
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消費者への直接手法必要に

活力ある地域経済を目指して
〜地域力を日本力に〜

住信基礎研究所 主席研究員
伊藤 洋一氏

伊藤 洋一氏

 世界はいま、大きな技術革新の時代を迎えている。来年には日米の自動車メーカーがこぞって電気自動車を出すなど、いよいよエネルギー分野の革命が起こる気がする。
 一方、IT(情報技術)分野を振り返ってみると、この半年で大きな変化が起きたことを実感している。私は東京の自宅やオフィスに3台、大阪で1台のパソコンを持っているが、以前は書いた原稿などをUSBメモリーに取り込み、それを紛失しないよう心配しながら新幹線で持ち歩いた。だが今は「クラウド」の仕組みを使って複数のパソコンでデータを瞬時にシェアすることが可能だ。大阪で書いた原稿を東京に戻ってパソコンを立ち上げたとたんに移動させることができている。
 以上はほんの一例だが、ITがもたらした変化は個人消費の分野でも顕著になってきた。今年の米国の年末商戦は、サンクスギビングデーの翌日に街に買い物に出かける「ブラックフライデー」の売り上げが伸びず、一方で週明けの月曜日にオフィスのパソコンからネット通販で購入する「サイバーマンデー」が盛り上がった。日本でもネット通販は好調だ。モノの流れがリアルな店舗からネットに移ってきている。
 話は変わるが、江戸時代の商売はご用聞きと配達に代表されるように、いわば売る側の人たちが買う側の人たちの方へ出向いていった。当時は日本の人口がほとんど増えておらず、売る側の努力が求められたわけだ。一方、戦後からこれまでの日本は人口が増加を続け、その中で買い物といえば消費者が百貨店やスーパーなどに足を運ぶかたちが一般的になった。
 だが今後は人口が減少に転じ、江戸時代のように売り手が買い手のところまで出向くという考え方が必要になる。さすがにでっちさんがご用聞きに回るのは人件費が膨らむので、その代役を務めるのがITだろう。
 ITを使えば、都会から離れた場所からでも消費者に直接アクセスできる。また高齢化が進む中、独居老人なども自宅に居ながらにして買い物ができる。これからの時代は、集客を増やすために店舗改装に投資するよりも、ネットの検索で上位に掲載されることの方が消費者の購買意欲刺激に役立つのではないか。
 ところで、現在も続く日本の名産品の中には江戸中期〜末期に生まれたものが少なくない。山形県天童市の将棋の駒もその一つ。困窮する藩財政の一助として、地元の木材の活用法を考えた結果だ。
 これからの日本は人口減に直面する。江戸時代にヒントを得るとすれば、新たに生み出した地域の名産品を、ITという武器を使って全国の消費者に直接アクセスして売る。そういう新しい形の地域おこしが必要になるだろう。