File.3 三井のリフォーム住生活研究所

生活体験の豊富な女性の視点が
日本の住文化を向上させる

住友女性の活用推進に取り組む企業が増えていますが、三井ホームリモデリングでは、20年前から女性建築士だけの組織があるそうですね。

西田はい。「三井のリフォーム」が、女性の建築士だけで構成する「リフォームプランナー」という組織を立ち上げて20年余りになります。その核となる「三井のリフォームデザインスタッフ会」は、8つの支部からなる全国組織で、現在200人近くの女性のリフォームプランナーが活躍しています。
  この組織には、全国のお客様が実際に抱える暮らしの悩みや要望に向き合うことで積み重ねてきた生きたデータが日々、蓄積されていきます。この貴重なデータに専門的な分析を加え、一般の方々にわかりやすく情報発信をしていくために2007年10月に発足したのが、「三井のリフォーム住生活研究所」(以下、「住生活研究所」)です。研究所の立ち上げには、リフォームのさらなる普及と発展を目指し、より充実した住生活の創造に貢献したいという思いが込められています。

住友具体的には、住生活研究所の組織や活動は、どのようなものですか。

西田運営は、全国8つの支部の支部長と私とで行っています。三井のリフォームデザインスタッフ会はこれまで、およそ10万件の事例を扱ってきました。この蓄積を生かすため、住生活研究所では、大学や住宅関連メーカーとの共同研究を行うとともに、お客様へも積極的に情報提供を行い、社会に貢献することを目的としています。

住友リフォームというと、水回りを新しくする部分改築がまず頭に浮かびます。そもそもリフォームとはどういうものなのでしょうか。

西田おっしゃるとおり、日本ではリフォームというと「修理・修繕」というイメージがあります。私がこの世界に入った20年前は、単に壊れた部分を直しメンテナンスするという発想がほとんどでした。
  ところが、すでに欧米では、古い建物の外側を残しつつ内部を新しく造り替える「リモデリング」が盛んで、家の価値はリモデリングとともにあるという考え方でした。どのようにリフォームをしてきたかを示す「リフォーム履歴」の作成も、当時から普及していたんですよ。日本では、ようやくこれからというところです。

住友でも、ここ数年、テレビ番組や雑誌などでも取り上げられ、リフォームに対する一般の方の関心も高くなってきたように思います。

西田その背景には、国の住宅政策が大きく方向転換したこともあると思います。
  これまでの住宅政策は、住宅不足を解消することを大きな目標としていましたが、「住生活基本法」が施行され、日本の住宅もようやく量から質への転換期を迎えています。これからは、短期間でスクラップ・アンド・ビルドを繰り返すのではなく、住まいを変えることで生活そのものを豊かに変えて、社会全体で良質な住宅を住み継いでいくことが重要になるでしょう。

リフォームプランナーという仕事は
家事や育児などの体験が生かせる

住友こうした時代を先取りして、「三井のリフォーム」では女性のリフォームプランナーの活用に力を入れてきたわけですが、どうして女性だったのですか。

西田最近は、家事に協力的な男性も増えてきましたが、まだ圧倒的に女性の方が生活体験を豊富に持っていると思うのです。私どものところへリフォームのご相談に見えるご夫婦でも、具体的なことは妻に任せるという方が大半です。
  また、お客様からも、「リフォームプランナーが女性でよかった」と、喜ばれています。女性建築士が経験してきた家事、子育て、親の介護など生活にかかわるすべての経験が生かせる仕事だと思っています。
  大学でも最近、女性の仕事としてリフォーム業界に注目するところが増えました。私もいくつかの大学で「リフォームという仕事の特質と将来性」について講義枠を受け持たせていただいておりますが、学生たちの関心は高まる一方です。

住友その中でも、この仕事の一番の魅力は何ですか?

西田机上の仕事では得られない面白さ、手応えがあることがまず一つですね。私どもの仕事は、お客様のお家に伺って、暮らしぶりを拝見するところから始まります。要望を伺い、そこにプラスアルファの付加価値をつけて設計・提案させていただくのですが、完成までのスパンが新築住宅に比べて短く、なおかつ出来上がったものを実際に見てお客様とともに喜び合えるというのは、大きな喜びですね。
  私自身は、もともと大手建築会社の設計部にいたのですが、そうした大手では、手掛ける物件のスパンも長期に及び、お客様に直接お目にかかれるとも限りません。その点、リフォームならものづくりにダイレクトにかかわれますし、一定期間に多くの物件を手掛けることも可能です。その一つ一つが自分の経験となって蓄積されていくのは、キャリアの構築という点でも大きなメリットではないでしょうか。

住友女性のリフォームプランナーが働きやすい職場環境づくりにも力を入れていると伺いました。

西田はい。働き方の多様性を認め、フレキシブルな組織形態を取っているのが大きな特徴で、原則として時間的拘束がないというのがまず一つ。それから、仕事量も選択できます。「子育て期だから、仕事を制限したい」という人は担当件数を少なめに、「バリバリ働きたい」という人は10件でも20件でもというように、自分の置かれている状況やライフステージに合わせて調節することが可能です。
  研修制度も充実しており、研修と実地の両面でスキルアップが図れる仕組みを整備しています。また、リフォームプランナー同士の勉強会や見学会なども行っており、横の連携から学ぶものも多いと思います。
  リフォームプランナーの年齢層も、20代から60代までと幅広く、夫の転勤や海外赴任などを経ても働き続けられる方が多いんですよ。地域・家庭・社会など多様な価値観に触れることが、仕事の価値創造力・生産性を高めるという、良い循環が起きています。

仕事への夢を膨らませ続けることが
キャリアの継続につながる
 「適性や強みを生かして活躍する女性が増えてほしい」と語る西田所長

住友西田所長は『リフォームで活躍する女性たち』を出版されましたが、その理由も、この仕事の魅力を伝えたいということにあるのでしょうか。

西田ええ。大学や講演で、リフォームでの設計分野が面白いということをお話しすると、共感していただけますが、まだまだ世の中に知られていないことを感じます。リフォームの分野に、女性の仲間が続いてほしいという気持ちで本を書きました。

住友住生活研究所として、今後はどのような活動を目指していますか?

西田リフォームの重要性や可能性をさらに広く知ってもらうための広報活動にも力を入れたいと思います。具体的には、書籍の発行やレポート発行、セミナー開催などがその一つです。
  リフォームの仕事は、さまざまなお宅に伺って、その方々の快適な住み心地とは何かを一緒に考えることですから、「どうやら家の中で、こういうことが起きているらしい」というニーズや傾向を早く察知することができるんですね。例えば、「夫婦別寝」を望むお客様が増えていることに気付いたのも、その一つです。そこで、事例およびアンケート調査を実施して、その結果を「適度な夫婦の距離感」というレポートにまとめ、発表しました。

住友夫婦別寝ですか。反響はいかがでしたか。

西田大きな反響を呼びました。このテーマは、私どものセミナーでも取り上げ、大好評となりました。面白おかしく取り上げたり、皆さん別寝にしましょうというのではなく、まず実態はどうなのかということを調査して、なぜそういうことが起きているのかを分析するのが目的です。調べてみると、調査対象の家庭総数の30%ぐらいが、別寝にしていたんですね。
  私たちの暮らしは非常に多様になっているということに、住宅設計のリフォームを通して気付かされます。こうした情報を発信することで、躊躇(ちゅうちょ)なくそのテーマについて話し合える社会の雰囲気づくりにも一役買えるのではないかと自負しております。

住友言われてみれば、生活時間が合わない妻と夫、夫のいびきがうるさくて眠れないという妻たちから「別々に寝ている」という話は、よく聞きます(笑い)。どういう住まい方がいいのかということを遠慮なく話し合えるというのは大事ですね。

西田お客様からも、新たに取り上げてほしいテーマが次々、寄せられます。そこで、次回のセミナーでは、「住まいの減築」(2008年2月)、「中古を買ってリフォーム」(08年3月)なども予定しています。

住友最後に、女性だけの組織を引っ張るビジネスリーダーとして、これからの女性リーダーたちに向けてメッセージをお願いします。

西田これまで衣食住のうち、住に携わる建築業界は、まだまだ男性主導と言われてきました。これからは、建築業界の中でも、とくに女性が力を発揮しやすいリフォームの分野から、女性の活躍の場を広げていきたいと思っています。
  女性の人生には、子育てや介護など、プライベートに軸足を置く期間もあると思いますが、どんなときも働くことの面白さは忘れずにいてほしいと思います。私も専業主婦だった時期が五年間ありましたが、その間も、方眼紙とペンは寝るときもそばに置いて、思いついた仕事のアイデアを書きとめていました。仕事に対する夢を膨らませ続けたことが、キャリアの継続につながりました。プライベートを充実させながら、仕事で輝きたいと望む女性たちには、自信を持って、生活者としての経験を社会に提案していってほしいと思っています。

ゲスト

西田恭子氏

三井ホームリモデリング株式会社 三井のリフォーム住生活研究所 所長

西田恭子氏


日本女子大学住居学科卒。大手建設会社設計部に勤務した後、リフォームの設計に25年間携わる。共栄短期大学住居学科非常勤講師、文化女子大学住環境学科特別講師なども務める。一級建築士・インテリアプランナー。近著に『リフォームで活躍する女性たち』(第一プログレス)、『リフォーム成功の素敵なレシピ』(グラフィック社)。

聞き手

住友真世氏

キャスター

住友真世氏


1988年に福島テレビにアナウンサーとして入社。92年フリーに転身。フジテレビ「FNNスーパータイム」のリポーター、NHK衛星第1「ワールドニュース」「BSニュース50」「ワールドニュースBS22、BS23」、テレビ東京「ワールドビジネスサテライト土曜版」などのキャスターを歴任。

協賛企業:
講座協力:東京21cクラブ