File.1 ライオン株式会社

新・快適生活産業No.1を目指す企業として
働く女性に期待します

福島女性の社会進出が進み、企業で中核的な役割を担う女性管理職の活躍が目立ってきています。ライオンでは、こうした女性リーダーの登用についてどうお考えですか。

藤重現在、当社の社員は約2,500人で、そのうち女性の割合は約20%です。女性社員に占める管理職の比率は5.5%ですが、女性管理職の人数は毎年2割のペースで増えています。これは男女を問わず適正な人材登用を行った結果ですが、男性管理職の伸び率より、女性管理職の伸び率の方が上回っています。
 当社が営業職を中心として女性総合職の本格的な採用を始めたのは、男女雇用機会均等法が施行された1986年。それから20年以上たち、彼女たちは現在、企画、生産、スタッフ部門など、さまざまな部門でマネジメントを行う立場になっています。女性ならではの強みを生かして活躍する女性リーダーが台頭しつつあることは間違いありません。

福島女性ならではの強みとは、どんな点なのでしょうか。

藤重まず、生活者の視点に立って商品を開発する能力に優れているということです。新商品の開発で鍵を握るのは「暮らしの兆し」を感知すること。日常生活の「気づき」から生まれる商品こそが、お客様の生活に根付く商品に育ちます。生活者の潜在的なニーズをくみ取る女性の鋭い視点は、新商品の開発でも十分に生かされています。ブランドを育てる能力の高さも女性ならではの強みの一つです。
 一般に女性はブランドに対する愛情が強く、子供を育てるように丁寧に商品を育て上げる傾向が見られます。当社のロングセラーである衣料用柔軟剤の「ソフラン」やハンドソープ「キレイキレイ」のブランドマネージャーも女性です。 福島 女性ならではの視点が、新商品の開発に結びついた事例などがありましたら紹介していただけますか。

藤重例えば、当社には商品の香りや香味を設計する調香技術センターという研究所があります。この所長は女性です。私たちが提供する生活日用品にとって、香りは命のようなもの。いかにして生活者に受け入れられる香りを提供するか。こうした繊細さが求められる仕事では、やはり女性の細やかな感性が欠かせません。
 最近のヒット商品の1つに、銀イオンの除菌バリア効果を利用して掃除したての清潔な状態を保つ「ルック きれいのミスト」があります。キッチン用、トイレ用などから玄関・くつ用まで、さまざまなシリーズが発売されています。その開発を担当したのも女性社員です。生活者の視点が商品開発に結びついた好例でしょう。掃除の間隔を空けても「きれいなまま」が続くと喜ばれています。
 こうした例は枚挙にいとまがありません。衣類にスプレーしておくだけでしわが取れる「スタイルガード」、カラーリングで傷んだ髪を補修する「フリー&フリー ダメージエイド」。これらも女性社員が開発したものですが、男性社員には思いつかない発想が多く含まれています。

福島社長のお話を聞いていると、男性の存在が小さく思えてきそうです。

藤重いえいえ、女性社員の数はまだまだ少ないので、決してそうとは言い切れません。しかし、女性の存在感が増しているのは確かです。ただし、女性には課題もあります。入社10年目くらいまでは、女性の方が活躍するケースが多く見受けられます。そこからが本当の勝負なのですが、その時に女性は出産などでキャリアを休まなければならないケースが出てきます。

多様な働き方を支援するために
出産・育児休業制度の充実を進めたい

福島女性にとって、出産や育児は仕事を続ける上で大きなテーマです。そのサポート体制についてはいかがですか。

藤重当社は、次代を担う子供たちを社会全体で支援する次世代育成支援対策推進法にのっとった行動計画を2005年から推進し、07年の4月にその認定を受けました。社員の出産や育児を支援し、育児後も継続して働ける制度の整備に力を入れているわけですが、その行動計画に沿って人事制度を改定しています。
 その1つは、育児短時間勤務の期間を小学校入学時まで延長したことです。また、育児休業の最初の2週間を有給とし、配偶者が家事専業であっても取得できるようにしました。
 今後は、さらに育児短時間勤務の期間延長も考えています。現在は小学校入学時までですが、これを小学校1年生の終わりまで延ばす予定です。また、育児が大変な局面では、例えばフレックス勤務を取りやすくするなど、柔軟な働き方ができるように支援していきたいと思っています。
 キャリアの継続性を図ることも女性活用の視点からは重要な問題です。当社では昇進昇格に際して、出産以前と出産・育児後の勤務評価のみを対象としています。育児休業などを取得したことが昇進昇格に影響を与えないシステムとなっているわけです。

福島制度を整備することは大切ですが、その制度がうまく機能する環境をつくることも重要だと思います。

藤重その通りです。そのために心を砕いているのが、多様な働き方を認め合う企業文化を浸透させることです。核家族化が進み共働き夫婦も多くなっている今は、育児は決して女性だけの問題ではありません。  当社では、これまで管理職一人を含めた4人の男性が育児休暇を取っています。性別を超えた多様性を社員全体に理解させ、公正公明な評価によってそれに見合う報酬を支払う姿勢を伝えることが、企業文化をはぐくむ糧だと思っています。女性社員の育児休暇の取得率は今のところ100%で、全員が元気に職場復帰を果たしています。多様性を認め合う企業文化が浸透してきた成果として、誇りに思っています。

女性に活躍の機会を提供することは
最も大切な経営戦略の一つ
 「女性が活躍できる職場は社員全体の意欲向上へとつながる」と藤重社長。

福島先ほど社長は、女性社員の数はまだまだ少ないと話されましたが、男女の適正な比率はどのくらいだとお考えですか。

藤重それは何とも言えません。意欲と能力のある人なら、男女の区別なく活躍の場を提供するのが当社の基本的な姿勢です。女性に対する期待が大きいのは事実ですが、その比率を意図的に増やしていくつもりはありません。
 ただし、女性社員の数は増えつつあります。04年に24%だった新卒採用における女性の割合は、07年は44%となりました。選考は性別を問わず、全く同じ基準で行っていますが、結果として女性の比率が高まっています。
 特に顕著なのが、研究職を志望する人が増えていることです。当社は23区内でも有数の研究開発センターを保有しています。こうした環境で、身近な生活日用品分野の商品開発に自分の力を発揮したいと考えて応募してこられます。また、研究職以外でも専門性を高めたいと考える女性の応募も増えています。女性でも工場での生産技術を高めたいと入社される方もいますよ。高い専門性を持つ人材の育成は、当社の課題の1つです。管理職への登用だけではなく、複数のキャリアパスを用意していることも、当社の人事制度の特徴の一つだと言えるでしょう。

福島個人の価値観が多様化する現代にあって、持続的な成長を目指す社長の経営ビジョンは何でしょうか。

 
2007年9月末現在で次世代法の認定を受けている企業は366社。

藤重ライオンは現在、社是である「愛の精神の実践」の下、3つの企業ビジョンを掲げ事業を推進しています。
1つ目は、「新・快適生活産業No・1企業を目指す」こと。「新・快適生活産業」とは、おはようからおやすみまで、毎日の暮らしを快適に過ごすために、自分自身の健康と生活環境改善に役立つ商品、サービスの提供を行う産業であります。言い換えれば、充実した生涯を過ごすために、毎日の良い習慣を提案し提供する産業です。具体的には、日用品、薬品、機能性健康食品という、3つの分野が融合して構成される3兆円を超える規模の市場でNo・1になることを目指しています。
 2つ目は、持続可能な循環型社会を実現するために「環境対応先進企業」を目指すことです。環境に配慮した企業活動は、今や企業の社会的責任そのものと言えます。当社は1970年代に石油原料から植物原料への転換を進め、環境の保全に努めてきました。その技術の結実ともいえるのが洗浄成分の植物原料比率を高めた衣料用洗剤の「トップ」です。世界レベルで最も進んだ環境対応先進企業を目指していきます。
 3つ目は、「挑戦・創造・学習の企業文化」を継続していくこと。116年の歴史を持つライオンですが、その原動力となっているのは「常に革新を続けるという伝統」の力です。より高い顧客満足を求めて挑戦と創造を連続的に行い、絶え間ない学習を通して企業革新を進めていく。そうした企業文化を継承することは今後ますます大切で、より大胆な企業革新を進めていきたいと思います。
 こうした企業ビジョンの推進力として私が期待しているのが意欲と能力のある女性たちです。積極的に活躍の機会を提供することは、ライオンにとって最も大切な経営戦略の1つです。

福島個性を重んじ、多様な働き方ができる先進的な組織づくりが、企業の活力に直結する時代ですね。最後に、今後のライオンを担うであろう女性たちに対してメッセージをお聞かせいただけますか。

藤重ライオンは、より優れた製品を開発することによって、「共感」と「感動」を提供できる会社であり続けたいと思っています。そのためにも、次のライオンを担う女性たちの力に期待しています。こうした当社の考え方に共感してくれる若い力との出会いを大切にしていきたいと思っています。

ゲスト

藤重貞慶氏

ライオン株式会社代表取締役社長

藤重貞慶氏


1947年生まれ。慶応義塾大学商学部卒。ライオン油脂(現ライオン)入社、国際事業本部長、家庭品営業本部長などを経て、2002年専務取締役、04年代表取締役社長就任。

聞き手

福島敦子氏

キャスター/エッセイスト

福島敦子氏


津田塾大学卒。経済番組のキャスターや、週刊誌でのトップ対談など、企業・経営者への取材を精力的に行う。経済のほかコミュニケーション、環境、地域再生などをテーマにした講演やセミナーなどでも活躍。著書に『それでもあきらめない経営』(毎日新聞社)など。

協賛企業:
講座協力:東京21cクラブ