ビリケンさんの新世界
名古屋テレビ塔の展望台より1メートル高くしたという通天閣5階の展望台に、木像のビリケンさんが祀られている。とんがり頭につり上がった目、薄笑いしているような口元、キューピッドのようなメタボ腹。合格祈願、縁結びもかなえる幸福の神様というが、ありがたいというよりは、今風にいえば「キモカワイイ」というところか。
通天閣同様、ビリケンさんも2代目。1908(明治41)年にアメリカの女性美術家が夢に見た神様を形にしたところ大人気。4年後にオープンした新世界の遊園地ルナパークに石膏像がまつられたが、その後行方不明になってしまった。1980(昭和55)年に大阪の繊維会社「田村駒」が商標として使っていた像をもとに再現、展望台に安置した。
投げ出した足をなでるとご利益があるといわれ、来場者の際限のない願いのせいか、ビリケンさんの足裏はへこんでしまっている。台座に刻まれた「THE GOD OF THE THINGS AS THEY OUGHT TO BE」は、万事あるがままに司る神といった意味とか。生誕100年の今年、久しぶりに来場者が100万人を超えたのも、好況、不況の波にもジタバタせず、「ぼちぼちいこか」と腹の据わった浪花商人精神に、ビリケンさんが応えてくれたのかもしれない。
通天閣を文字通り足元で支えているのが新世界の商店街。ビルの壁面一杯にありとあらゆる宣伝文句を書き並べ、張りぼての看板を吊り下げ、それでも足りずに路上にも案内板を立てる、目がくらむほどの宣伝ぶり。コテコテの大阪流というのはこれかと、圧倒されるばかりだ。
そんななか、名高いジャンジャン横丁が思いの外落ち着いたたたずまいを見せている。かつて三味線の音が絶えなかったところから名付けられたというが、碁・将棋センターや間口の狭い古い商店が並び、派手さはない。「ジャンジャン横町美術館」と名付け、壁面に初代通天閣や戦前の新世界の写真が展示されていた。
イラストの新世界マップや戦前の地図、横丁のテーマソング「恋してジャンジャン」発売中のチラシなどが目に付く。「若手の会『新世代』」の表記があり、2代目、3代目が商店街の盛りたてに一役買っていることが見て取れる。4年後に誕生100年を迎える新世界。若手を中心に、21世紀の新たな新世界の姿を模索中とみた。
文・石田 修大
ビリケン像
看板と宣伝文句のあふれた新世界
狭い露地のジャンジャン横町
古い写真を並べた壁の美術館




